第5章 おとぎのくにの 3
生まれてから一度もあの屋敷の外に出たことがないというサトとカズ。
2人とも現状に不満はないと言うけれど、ショウ兄さんや俺が城の様子や視察で訪れた土地のことなんかを話すと、いつも目をキラキラさせて聞いている。
いくら不満がなくたって、憧れる気持ちはあるだろう。
我ながら良い案なんじゃないかと思って、すぐにショウ兄さんに相談した。
ショウ兄さんも賛成してくれたけれど、この案の一番の問題はカズの外出が許されるかということで。
兄さんにアドバイスをもらって、母上にお願いすることにした。
それは王妃としての力に頼るというよりは、母上と公爵夫人が親友だからで。
素直にカズと街に出掛けたいのだと話すと、母上は何故かウキウキした様子で。
すぐに公爵夫人へ話が通って、思っていたよりも簡単にカズの外出は許された。
ただ本当はショウ兄さんとサトも一緒に…と思っていたのだけれど、サトの外出までは許可されなかったらしい。
とても残念だけれど、やっぱり公爵令嬢であるサトは侍女であるカズと同じようにはいかないよな…
ある程度予想していたことだし仕方ないか…
ショウ兄さんにもカズだけでも許可されたことを喜んで、カズを楽しませることだけを考えろと言われた。
もちろんそのつもりで準備しているけれど、大きな心配もあった。