第5章 おとぎのくにの 3
-ジュンside-
カズの誕生日が知らない間に過ぎ去っていて。
ショックでつい怒ってしまったが、カズが怯えて泣きそうな顔で頭を下げたのを見てすぐに後悔した。
こんな顔をさせたい訳じゃない。
謝罪が聞きたい訳でもない。
カズにはいつだって笑っていてほしいのに。
すぐに感情的になってしまう俺は失敗してばかりだ。
どんなに悔しがったって時が戻ることはないのだから、それならば今から祝えばいいと気持ちを切り替えたものの…
カズはあまり自分のことを話してくれないから、カズの好みや欲しいものがさっぱり分からない。
だから直接聞いてみたら、何もいらないとか言うし。
女の子が好きそうなものを色々挙げてみても、カズには物欲というものがないのか全く心惹かれている様子がない。
喜ぶどころかどんどん困ったように眉が下がっていく一方だ。
でも俺にカズの誕生日祝いをしないという選択肢はない。
カズが俺に世界にたった1つの贈り物をくれたように、俺だってカズが笑顔になれるような贈り物をしたいんだ。
仕方なく一旦保留にして、城に戻ってからも考え続けて。
ふと気付いた。
物にこだわる必要はないんじゃないかって。
どんなに高価なものだって、それにカズが魅力を感じないのであれば意味がない。
喜ばれるか分からない物よりも、カズが喜ぶことは何かを考えて。
たどり着いたのが、カズを外の世界に連れ出すことだった。