第5章 おとぎのくにの 3
ジュンは、本当はショウと私も一緒に4人で行きたいと言っていたらしい。
けれど、私の外出はお父さまやお兄さまたちが許してくださらなかった。
本当はカズのことも家族同然にとても可愛がっているから、外に出したくはなかったみたいだけれど。
そこはお母さまが押しきった。
お兄さまたちは、よそ見をしてはぐれないように…とか、誰に声を掛けられても例えお菓子をくれると言われてもついて行ってはダメだ…とか。
とにかく誘拐と迷子に気をつけろと、しつこく念押ししていた。
心配する気持ちは分かるけれど、それがますますカズの不安を煽った気もする。
なかなか涙の止まらないカズの背中を、ポンポンとあやすように叩く。
「私のことは気にしなくていいの。いつかショウが連れて行ってくれるって、そう言ってくれてるから…ね?」
それはカズを励ますための方便などではなく。
ショウは今回も私が外出出来ないことは予想済みだったようで、手紙には『サトのことはいつか俺が連れて行くから、その日を楽しみにしていてほしい』と最初から書かれていた。
本音を言えばカズと一緒に行きたい気持ちもあるけれど、今はショウのこの言葉だけで十分だと思えた。
「それならば私も一緒にその日を待ちます…」
でもカズは納得してくれない。
「せっかくジュンが誘ってくれたんだから、そんなこと言わないの…そもそもこれはカズの誕生日のお祝いなんだよ?」
「でも…」
このままでは埒が明かない。
もうすぐジュンが迎えに来てしまうし、ここは奥の手を使うしかないかな…