第5章 おとぎのくにの 3
ちょっとした騒動はあったものの、4人だけのジュンの誕生日会は無事に成功して、楽しい時間を過ごすことが出来た。
ただ、もうすぐお開きになるという時に、ジュンが何気なくカズに誕生日を聞いて、もうひと騒動起きてしまった。
実はカズの誕生日は6月で…知らない内に2ヶ月以上過ぎていたと知ったジュンがショックを受けて怒ってしまったのだ。
「なんで教えてくれなかったんだよっ!」
「…申し訳ありません」
怒鳴り声で責められて、カズは真っ青になって頭を下げた。
見て分かるくらい震えているのが可哀想で、口を挟もうとしたら、先にショウが口を開いた。
「ジュン、そんな言い方はないだろう?それに自分だって誕生日をカズに伝えなかったんじゃないか」
ショウが嗜めるように叱ると、ジュンはうっと言葉に詰まった。
ほんの数刻前に、それが原因の1つでカズを泣かせたばかりだからだ。
「いいえ、ジュンさまは悪くありません。お伝えしなかった私が悪いんです…ジュンさま、本当に申し訳ありませんでした」
カズの性格からして、聞かれない限り自分から誕生日を教えるなんてことは、まずしないだろう。
それでも決してジュンを責めず、それどころか庇うように頭を下げ続けるカズがいじらしい。
「いや、ごめん。カズは何も悪くない。聞かなかった俺が悪いんだ。キツイ言い方してごめん」
カズの健気さに心を打たれたのか、ジュンも素直に自分の非を認めて謝ると、カズの頭を上げさせた。
「でも知らなかったことがショックだったんだよ。ワガママだけど、教えてほしかった。カズの誕生日を祝いたかったんだ」
「ありがとうございます。そのお気持ちだけで十分です」
ジュンが少し寂しそうに訴えると、カズは嬉しそうにふわりと微笑んだ。