第3章 キミ色フォルダ Root Yellow
でも、やっぱり不安は消えない。
「今も…気持ち悪くない?」
体は少し離れたけど、雅紀の腕はまだ俺の背中にまわったままで。
「気持ち悪くなんてないよ!そりゃ、びっくりはしたけど…その、ニノの気持ちは素直に嬉しいよ」
いつもと何も変わらないお日様みたいな笑顔。
こんなあったかい返事がもらえるなんて…
「ありがと……俺、雅紀のこと好きになって、本当に良かった…」
堪えきれずに涙が溢れてくる。
「これからも今まで通りでいてくれる?」
「いや、それは無理かも…」
もしかしたら、何も変わらずにいられるんじゃないか…なんて。
そんな欲が出てしまったけど、それはすぐに雅紀に否定された。
胸がズキっと痛む。
でも同時に当たり前だとも思う。
そりゃそうだよ。
高望みしすぎ。
「そっか、やっぱり……えっ?ん…ぅ…」
無理だよねって続けようとしたのに。
それ以上は言えなかった。
だって口を塞がれてしまったから。
俺の唇に雅紀の唇が重なってる。
俺…今、雅紀とキスしてる?
嘘でしょ?
スローモーションみたいにゆっくり離れていく雅紀の顔。
震える指で唇に触れてみる。
ここに、雅紀のが触れた?
本当に?
「俺、夢見てる……?」
これは現実なの?
夢なら覚めないで…
「ごめん、現実…」
雅紀の声が、現実だよって教えてくれる。
見たら、雅紀の唇にグロスが移ってキラキラしていて。
本当なんだ…
実感したら、また涙が溢れた。
「雅紀とキスなんて一生出来ないと思ってた…」
「泣かないで」
ポロポロ溢れ続ける涙を雅紀が優しく拭ってくれる。