第3章 キミ色フォルダ Root Yellow
「わっ…」
中途半端な体勢だった俺はバランスを崩して倒れ掛けて。
「危なっ…ごめん!大丈夫!?」
気付いたら雅紀の腕に抱きとめられていた。
「だい…じょぶ…」
嘘。全然大丈夫じゃない。
全身の血が沸騰しそう。
慌てて離れようとするのに、雅紀は逆に腕に力を込めてくる。
抱き締められるような形になって、今度は俺が硬直してしまった。
その体勢のまま、雅紀が小さい声で話しかけてくる。
「ねぇ…俺のこと好きって…マジで?」
「………うん…まじ。…ごめん」
改めて確認されて泣きたくなった。
でも今さら否定も出来ないし、する気もない。
「いや、謝んないで」
もう何度目か分からない“ごめん”を口にしたら、雅紀に止められた。
「いつから?いつから俺のこと…その…」
「いつからだろ…はっきりは分かんないけど、もうずっと…ずっと好き…」
もう失うものもないから素直に答える。
伝えることなんて出来なくて、消えるのを待つだけだった想い。
ずっと隠してた気持ちを口に出来るのは単純に嬉しかった。
雅紀は体を離して俺をまっすぐ見つめる。
その顔は照れてるような困ってるような、なんともいえない表情をしていた。
「ニノって俺のこと避けてなかった?近くに来ることも、触れることもないしさ。いつも距離感じてたから…どっちかって言えば嫌われてるかもって思ってたよ」
ぼそって言われて、ちょっと驚く。
そんな風に思われてたんだ。
「だって…こんな気持ち持ってる俺に触られたら気持ち悪いだろうなって思ってたから…」
自分の中で勝手に決めつけて、実際に雅紀がどう思ってるのかなんて、そういえば考えたことなかった。