第3章 キミ色フォルダ Root Yellow
「え?全然気持ち悪くなんてないけど…むしろ可愛すぎて目のやり場に困るって言うか…」
どんなキツイ言葉をぶつけられるのかと思っていたら、聞こえたのは本当に困ったような声で。
今、可愛いって言った?
雅紀が、俺のこと?
聞き間違い?
「ニノなんだけどニノじゃないみたいって言うか…可愛い女の子にしか見えないって言うか…いや、俺なに言ってんだろ…」
そーっと目を開けて見たら、雅紀は赤い顔して困ったように眉毛を下げてて。
「でも本当に!気持ち悪いとは思ってないから!可愛いと思ってるから!信じて!」
なんかよく分からないけど、必死な顔して可愛いって力説してくれるから、小さく頷いた。
聞き間違いじゃなかった…
雅紀が俺のこと可愛いって言ってくれた。
それも何回も。
夢みたいだと思ってたことが叶っちゃった…
頭がふわふわしてる。
「なんでそんな格好してるの?」
「放課後、女子に捕まって…ミスコンの衣装合わせしたいって…」
「ああ、なるほど」
聞かれるまま答えたら納得したみたいだった。
なんでそのまま帰ってきたのかは気にならないのかな?
そんなことを考えながらぼんやりと雅紀を見つめていたら、またふいっと目を逸らされた。
それでハッとする。
いくら口で可愛いって言ってくれたとしても、真に受けちゃダメなんだ。
そりゃ、女装男に見つめられたって嬉しくないだろう。
これ以上不快な思いをさせちゃいけない。
雅紀に顔が見えないように、ウィッグで隠しながらまた俯いた。
「あー、えっとさ。今日はどうしたの?わざわざうちまで来てくれるなんて、何か急ぎの用事でもあった?」
俺の態度から何かを感じたのか、雅紀が空気を変えるように明るい声で聞いてくるけど。
それは俺にとっては答えに困る質問だった。