第3章 キミ色フォルダ Root Yellow
俺はみんなみたいに喜べない。
だって雅紀が振られたんだろ?
俺は見てるだけだったけど…ずっと見てたからこそ、雅紀が本当に彼女のことを好きだったって知ってる。
すごく大切にしてたことも。
それなのに振られたって…
理由は分からないけど、雅紀は大丈夫なんだろうか?
雅紀の心中を想像しただけで胸が締め付けられて。
「ごめん!用事あるの思い出したから、俺帰るね!」
掴んでいた制服を無理やり鞄に詰め込んで、そのまま教室を飛び出した。
「え!?二宮くん!?」
「そのまま帰るの!?」
「まぁ、可愛いから問題ないとは思うけど…」
「可愛すぎてナンパされちゃうかもよ?」
「ありえるー!」
後ろの方で何やら女子がザワついてるのは分かったけど、俺の足は止まらなかった。
走って走って、気が付いたら雅紀の家の前にいた。
前にほかの友だちと一緒に一度だけ来たことがあって。場所は知ってた。
でもインターホンに手を伸ばし掛けたところで、ふと我に返る。
勢いに任せてここまで来ちゃったけど、俺はどうする気だ?
振られて落ち込んでいるだろう雅紀を励ます?
なんて言葉を掛ける気だよ。
ただ心配で、ジッとしていられなくて。
それだけで来ちゃったけど。
俺に出来ることなんて何もない。
そもそもそこまで仲が良いわけでもないのに。
こんな突然押し掛けられても、雅紀だって迷惑だろう。
……帰ろう。
スッと冷静になって、踵を返しかけた時
「うちになんか用ですか?」
背後から声を掛けられて、飛び上がりそうなくらい驚いた。
振り向かなくても分かる。
この声は雅紀だ。
どうしよう…どうしよう…
「あの…?」
雅紀の声が不審そうな響きになって、なんて言えばいいのか分からないまま、恐る恐る振り向いた。