第3章 キミ色フォルダ Root Yellow
話し合いから数日後。
授業が終わり帰ろうとしてたら、クラスの女子たちにとっつかまった。
「やだー!二宮くんウエストほっそ!」
「足も綺麗!」
放課後の教室。
中にいるのは女子たちと俺だけ。
男子を追い出し、扉にはご丁寧に『男子立ち入り禁止!!』と書かれた紙まで貼られている。
「俺も男なんだけど…」という俺の至極真っ当なはずの意見はあっさり黙殺された。
まぁ元から女子に口で勝てるはずもないし、早々に色々諦めた俺は、さっきから女子に取り囲まれ好き勝手されている。
「これ、お姉ちゃんのお古なんだけど」
「セーラーだ!可愛い!」
強引に制服を剥ぎ取られたと思ったら、セーラー服を着せられて。
「ウィッグはどうする?黒?茶?」
「長さは?やっぱりロングかな?」
ウィッグとか言ってるけどカツラでしょ?
それを被せられて
「お肌すべすべ!」
「あんまりお化粧しなくても大丈夫そうだね」
顔に何やら色々塗りたくられる。
上向けだの下向けだの。
目を閉じろだの開けろだの。
もう何か言う気力もなく、言われるがままにしてる。
「口、んーぱってして!」
「んーぱ…?」
「そうそう!」
最後にグロスとかいうベタベタしたのを口に塗られて。
「出来た!完成!」
全部終わる頃にはぐったり疲れ切っていた。
俺自身は何もしてないはずなのに、すげー疲労感なんだけど。
「二宮くん、立って立って!」
促されてノロノロと立ち上がると
「すごい可愛いー!」
「マジで美少女!」
「これ本気で優勝狙えるよ!」
女子たちからきゃーっと歓声と称賛の声が上がった。
遠慮なく全身をジロジロ見られて、なんだか身の置きどころがない。
そもそも自分が今どうなってるのか、俺には何にも見えないし。
困惑する俺に気付いたのか、1人が手鏡を渡してくれる。
「はい!見てみて!」
恐る恐る覗いてみると、そこには化粧を施された俺の顔。
思ったより変わってないぞ…?
「これで女の子に見えんの?」
ちょっと不安になる。
だって、俺のままじゃない?