第3章 キミ色フォルダ Root Yellow
ちくしょう!他人事だと思って適当なことばっか言いやがって。
俺は女装なんてまっぴらごめんだ!
そう言ってやろうと思ったのに。
「ほら!雅紀!ミスターからも何か言ってやれよ!」
余計なことを言い出した誰かのせいで、出かかってた文句は言葉になる前に消えてしまった。
雅紀がキラッキラの笑顔を俺に向ける。
「きっとニノならすげー可愛くなるよ!一緒に優勝目指そうぜ!」
なんちゃってー、なんて冗談ぽく言って笑ってるけど。
その笑顔に、言葉に、俺の心臓は壊れそうなくらいドキドキしていた。
雅紀が俺のこと可愛くなるって…
もし…
もし本当に可愛くなれたら、今みたいな笑顔で可愛いって言ってくれる?
一瞬でもいいから、彼女に向けるみたいな眼差しを俺に向けてくれる?
そんな夢みたいなこと…絶対ありえないと思っていたことが、もしかしたら実際に起こるかもしれない?
そんな考えが頭をよぎってしまったら、もう拒否は出来なかった。
「お願い!二宮くん!」
ダメ押しのように委員の子たちに頭を下げられて。
「……どんなに気持ち悪い仕上がりになっても文句言うなよ」
本当は嫌だけど仕方ないから渋々…というポーズで、遠回しに引き受けた。
途端にワァッと歓声が上がる。
「安心して!私たちが腕によりをかけて美少女にしてあげるから!」
「二宮くんなら絶対大丈夫!」
「ハハハ…」
やたら張り切る女子たちには乾いた笑いしか返せなかったけど。
“ ニノならすげー可愛くなるよ”
さっきの雅紀の言葉がいつまでも耳に残って、ドキドキがおさまらない胸をそっと押さえた。