第3章 キミ色フォルダ Root Yellow
今日のLHRは文化祭についてのあれこれ。
クラス委員と文化祭実行委員が中心になって、なかなか熱い話し合いが続いてる。
正直、文化祭なんてめんどくさい。
やりたいこともなんもない。
まぁ、クラスで浮かない程度に参加しておけばいいでしょ。
最低限の義務さえ果たしたら、あとはサボろう。
そんなことをぼんやり考えながら、表面だけはちゃんと話を聞いてるフリをする。
退屈でこみ上げて来るあくびはこっそり噛み殺した。
長い議論の末、なんとかクラスの出し物は決まった。
でも、話し合いはまだ終わりじゃない。
「次はミス・ミスターコンテストについてなんだけど…」
文化祭の恒例行事らしいミスコン。
各クラスから強制的に出場者が選出されて、順位をつけられる。
くだらないこと極まりないイベント。
ま、どうせうちのクラスのミスターは雅紀だから、俺には関係ないけどね。
俺を含め、たぶん大半の男子はそう考えていたのに。
「今年は新たに女装男子部門が出来て…」
実行委員の一言で一気に教室がざわついた。
「何それー!面白い!」
「楽しそうだねー!」
変な盛り上がりを見せる女子に対して
「はぁ?なんだよ女装って」
「女装男子なんて気持ち悪いだけだろ」
男子からはブーイングがおこる。
「そりゃ誰でもいい訳じゃないよ!」
「やる人は選ばなきゃだけど…」
「例えば二宮くんとか!絶対可愛くなると思うな」
キャーキャー言ってる女子の口から突然俺の名前が出て、耳を疑った。
クラス中の視線が俺に刺さる。
「は?何?俺?」
驚いてしまって、ろくな反応が出来ずにいたら
「…確かに」
「二宮ならアリかも」
俺をマジマジと見た後、何故か男子たちも妙に納得したような顔になった。
「いやいやいや!ナシでしょ!」
嫌な風向きを感じて、必死に否定しても
「二宮、可愛い顔してるもんな」
「うん、二宮ならいけるな」
みんな好き勝手なことを言うばかりで誰も俺の言うことなんか聞いてない。