第16章 おとぎのくにの 8
「もし嫌だったら、カズは来なくてもいいからね」
「サトさま、それ本気で仰ってます?」
「いや…」
一応そう伝えるとカズにじとっと睨まれて、思わず目を逸らしてしまう。
それでもカズの視線が弱まらないから、早々に降参することにした。
「ごめん、カズは絶対ついてきてくれるって思ってる」
もちろんカズが本気で嫌ならば強制する気はない。
でもカズは私の決めたことを否定しないし、必ず付き合ってくれるっていう絶対の信頼があった。
まぁ、甘えともいうのだけど。
「当たり前です!サトさまお一人で行かせるわけがないでしょう!」
「うん、ごめん…」
カズが思っていた通りの言葉を口にしてくれるから、怒られているのに嬉しくなって少し笑ってしまう。
「もう…」
カズも本気で怒っていた訳ではないから、つられたように笑顔を見せてくれた。
カズのは呆れたような苦笑いだったけどね。
二人で少し笑い合って、でもすぐにカズは真顔になった。
「聞いてもいいですか?」
「うん」
「孤児院に行くのは構いません。嫌だとも思っていません。でも、どうして急に…?何だか今日のサトさまは…」
「いつもとちがった?」
「………はい」
言葉の先を引き受けると、カズは躊躇いながらもこくりと頷いた。
確かに今まで人と接することを避けていたのに、急に初対面の子どもたちと交流して、その上孤児院まで会いに行くと言い出したのだから、カズからしたら一体どうしたんだと思っただろう。
急すぎる変化に不安を感じたかもしれない。