第16章 おとぎのくにの 8
お兄さまとの話を終えて自室に戻ったら、気が抜けたのかどっと疲れが襲ってきた。
「はぁ…」
「大丈夫ですか?」
ソファに倒れ込むようにして座った私を見て、カズは心配そうな顔をしているけれど。
カズも絶対に疲れているはず。
「カズもほら、座って座って」
放っておくと疲れを隠して仕事を始めちゃいそうだから、カズが動き出す前にその手を捕まえる。
逆らっても無駄だということを身をもって知っているからか、それとも断る気力もないくらい疲れているのか、軽く手を引いただけでカズはおとなしく私の隣に座った。
「疲れたね…」
「はい…」
しばらく二人して無言でぼんやりとしてしまう。
走り回って遊んだから体力的にも疲れているし、今日は初めてのことだらけだったから精神的にも疲れていた。
楽しかったのは本当だけれど、やっぱり無意識のうちにずっと気を張っていたんだと思う。
でもいつまでもぼんやりとしている訳にもいかない。
カズと話をしないと…
他の侍女が淹れてくれた甘い紅茶を飲んで、ほっと息を吐いて。
カズに向き直ると、カズも手にしていたカップを置いて私の方を向いてくれた。
「孤児院に行くこと、勝手に決めてごめんね」
カズに相談することなく口にしてしまって、そのまま決定事項になってしまったから申し訳なく思っていた。
「いえ、謝る必要はありませんけど…」
「けど?」
「………とても驚きました」
濁した言葉の先を促すと、カズは困ったようにポツリと呟いた。
「そうだよね」
思わず頷いてしまう。
口にした私自身も驚いたけど、カズにとっても想像もしていなかったことだろうと思うから。