第16章 おとぎのくにの 8
こういうのは早い方がいいだろうと、屋敷に戻ってすぐにお兄さまにお話をしに行った。
いつもお忙しそうだけれど、お願いすれば必ず時間を作ってくれる。
今日も「ちょうど休憩しようと思っていたところだよ」と言って、明らかに途中のようだった仕事の手を止めてくれた。
申し訳ないと思う気持ちもあるけれど、お兄さまが本当に嬉しそうな顔をしてくれるから、その優しさに甘えさせてもらう。
お兄さまに、まずは今日あった出来事を順番に報告していく。
森で偶然マサキの知り合いの孤児院の子どもたちと出会ったこと。
何故か初対面のユーリに懐かれ、一緒に遊ぶことになったこと。
一緒に遊んで、たくさん話もして、気づけば全員と仲良くなっていたこと。
それを聞いたお兄さまはとても驚いていたけれど、マサキが子どもたちと仲が良いことはやっぱり知っていたみたいだった。
最後に、お義姉さまの代わりに孤児院へ慰問に行きたいとお願いすると、お兄さまは「サトの成長が嬉しくもあり、寂しくもあるな」と複雑な顔をされて。
しばらく考え込んでいる様子だったけれど、結局マサキを始め護衛たちを連れて行くことを条件に許可してくれた。
護衛がつくことは森に行く時と変わらないから特に異論はない。
他にも不安になりそうなくらい細々した注意事項をたくさん言い聞かされたけれど、それもまぁいつものこと。
私を心配してくれているが故のことと分かっているから素直に聞いて。
これほど心配なのに、私のお願いを聞き入れて許可してくれたことに感謝した。