第16章 おとぎのくにの 8
でも楽しい時間が過ぎるのは早くて。
「そろそろ帰りましょうか」
「えーっ…」
マサキにそう声を掛けられて、子どもたちが不満の声をあげたけど。
「油断してるとすぐに暗くなるぞ」
「………」
マサキが少しだけ怖い顔をしたら、すぐに口を閉ざした。
幼い子たちも暗くなると危ないというのはよく言い聞かされているのだろう。
それ以上駄々をこねることなく、皆おとなしく野いちごの入ったカゴを手に帰路についた。
行きと同じようにユーリと手を繋いで歩いていたら
「……さとさま、またあえる?」
さっきまでの元気が嘘のようにシュンとしてしまったユーリがおずおずと聞いてきた。
そんな簡単には会えないとユーリにも分かっているのだろう。
悲しそうに見つめられて、何だか胸がギュッとして。
「………お義姉さまの代わりに孤児院に行けるように、お兄さまに頼んでみるわ」
気がついたらそんな言葉が口から出ていた。
自分でも自分の発言に驚いてしまったけれど
「ほんと?さとさまがあいにきてくれるの?」
「……ええ」
ぱっと目を輝かせたユーリに違うとは言えなかった。
「かずちゃんも?きてくれる?」
「……はい」
戸惑いを隠せていないカズがそれでも頷くと、ユーリだけじゃなく周りの子たち全員が飛び上がって喜んだ。
「やったー!」
「またあえる!」
「うれしい!」
子どもたちの瞳がキラキラ輝いていて、私も自然と笑顔になる。
私も子どもたちと遊ぶのは楽しかったし、せっかく知り合えたのだからまた会いたいと思ったのは本当だ。
それに少し思うところもある。
ユーリが私の手を引いて一歩踏み出させてくれた。
その足を止めずにもう一歩、前に進んでみよう。