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イロイロ【気象系BL】

第16章 おとぎのくにの 8



「さとさま、もうあそべる?」
「ええ」

私たちの話が終わるのを大人しく待っていたユーリに誘われて、私も子どもたちと一緒に遊ぶことにしたけれど。

「でも遊ぶって何をするの?」
「えっとね…」

ここには玩具など何もない。

一体どうするのかと思ったら、ユーリはおもむろにその辺に落ちていた小枝を拾った。

「おえかきしよ!」
「お絵描き?」

ピンとこなくて首を傾げる私に、ユーリが枝で地面に線を引いて見せてくれた。

「こうやってかくんだよ」
「なるほど、地面をキャンパスにするのね」

ユーリを真似て、私も枝を手に取って。

何を描くか少し迷って、目の前のユーリの顔を描いてみた。

「ユーリ」
「わぁぁ…!!」

枝では細かく描くことが出来なかったから、かなり簡略化された似顔絵とも言えないような出来だったけれど、ユーリは目を輝かせて喜んでくれた。

「すごーい!さとさま、じょうず!」
「つぎはぼくをかいてー!」
「わたしもー!」
「はいはい」

褒められれば悪い気はしなくて、頼まれるままに次々に似顔絵を描いていく。

「すごい!」
「そっくり!」

一人描き上がるごとに歓声が上がって。

「サトさま、私もお願いします」
「え?カズも?」
「はい」

その場の全員の顔を描き終わる頃には何だかすごい達成感があった。

地面に並ぶみんなの顔を見て、子どもたちはニコニコ笑っている。

玩具なんて何もなくても、こんなに楽しむことができるのだと初めて知った。

その後は追いかけっこをして走り回り、疲れたら野いちごを摘んで食べ、休んだらまた走って。

子どもとの接し方が分からないと思っていたけど、特別なことをしなくても子どもたちはありのままの私をそのまま受け入れてくれた。

だから私も何も考えずに自然体で居られて。

こんな遊び方をしたのは初めてでクタクタに疲れたけれど、すごく楽しかった。

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