第16章 おとぎのくにの 8
「お義姉さまは…」
「………え?」
「お義姉さま…?」
話せることだけでも話してあげようとしたけれど、一言目で子どもたちが戸惑いの声をあげてざわついてしまったから先を続けられなかった。
そういえばまだ私が何者か伝えていなかった。
「あの、サトさまって……もしかして?」
恐る恐る聞かれて、マサキが言ってもいいのか確認するように私を見たから小さく頷いた。
特に名乗る必要を感じなかったから言わなかったけれど、お父さまやお義姉さまを慕うこの子たちに隠す必要はないように思えた。
「サトさまは領主さまの一人娘だよ」
「ぇぇえええーっ!!!」
マサキがそう告げると子どもたちは驚きの声をあげたけど、それはまるで歓声のようだった。
みんな目をキラキラさせていて。
「そっか…」
「領主さまのお嬢さまなんだ…」
年長組の子たちにまだ少し残っていた警戒心みたいなものが全てなくなった感じがした。
どうやらお父さまとお義姉さまのおかげで自然と私への好感度も上がったようだ。
私は何もしていないから、何だか申し訳ないような気もするのだけれど。
とりあえず話を続けることにする。
「お義姉さまは事情があってご実家に戻られてるの」
「病気とかじゃない?」
「ちがうわ」
「また会える?」
「ええ、必ず戻ってくるから大丈夫」
それがいつになるのか…私が王都へ戻るタイミングなのか、お義姉さまの体調が安定されてからなのか、そこまでは私には分からないけれど。
「よかった!」
身内の言うことだから信用出来ると思ったのか、子どもたちは安心したように笑って喜んだ。