第16章 おとぎのくにの 8
「僕たちが幸せに暮らせるのは全部領主さまのおかげなんです」
「領主さまは俺たちみたいな孤児や貧しい人たちのことも気にかけてくれる本当に素晴らしい方なんだって院長先生もいつも言ってます」
子どもたちが口々に父さまのことを褒めてくれる。
それは嬉しい。
本当に嬉しいけれども。
どうして急にこんな話になったのか、やっぱり全然分からない。
「領主さまだけじゃなくて若奥さまもとっても優しくて素敵な人なんです」
分からないうちに今度はお義姉さままで出てきた。
「…会ったことがあるの?」
「はい!」
「若奥さまは何回も孤児院に来てくれてます!」
思わず尋ねると子どもたちは元気よく頷いて、でもふっと表情を曇らせた。
「でも最近全然会えないんです……サトさま何か知ってたりしませんか?」
心配そうに聞かれて、この子たちが本当に聞きたかったのはこのことかと納得した。
きっとこの子たちは何度も会いに来てくれるお義姉さまのことが好きで。
でも突然来なくなってしまったから心配していたんだろう。
「僕たちのこときらいになっちゃったのかな…」
悲しそうな呟きに胸が痛くなる。
「ちがうよ」
「ちがう?本当に?」
「ええ」
お義姉さまが孤児院へ行けないのはご実家に戻られているからだ。
その理由は話せないけれど、この子たちの不安は取り除いてあげたい。