第16章 おとぎのくにの 8
「あなたたちは幸せなのね」
「はい!」
私に自分たちの気持ちが伝わったことが分かったのか、子どもたちは嬉しそうに笑った。
その笑顔が眩しかった。
きっと私には分からない複雑な思いもあると思う。
それでもこの子たちが幸せならば、私が言うことなど何もない。
何も知らないのに勝手に可哀想だと思ってしまったことを改めて深く反省した。
でもこのやり取りで、年長の子たちも少し心を開いてくれたみたいで。
「あの、サトさま…」
「なぁに?」
小さな子たちとは違ってまだ遠慮がちだけれど、向こうから普通に話し掛けてきてくれて嬉しくなる。
「サトさまはえらい人なんですよね?」
「………」
でもこの質問には困ってしまった。
確かに身分は高いのかもしれないけど、じゃあ偉いのかと言えば私自身には何の力もないし偉くもなんともない。
子どもたちがどう意味で聞いているのか少し考えてしまう。
でも子どもたちは答えを求めていなかったのか、私が答える前に次の質問に移ってしまった。
「サトさまは領主さまのこと知ってますか?」
領主さまって、お父さまのことだよね。
私がマサキや騎士団の団員たちを護衛として連れているから、領主の関係者だと思ったのかな。
何のために聞かれているのかさっぱり分からないけれど、この問いにははっきり答えられる。
「知ってるわ」
大きく頷くと、子どもたちの表情がパッと明るくなった。