第16章 おとぎのくにの 8
「サトさまが俺たちのこと見下して憐れんだわけじゃないのは分かります…」
「でも俺たち本当に可哀想なんかじゃないんです」
子どもたちはもう一度繰り返した。
その声にもう怒りは感じられなくて。
ただ理解してほしいんだと訴えられている気がしたから、黙って子どもたちの言葉に耳を傾けた。
「そりゃあ、父さんや母さんがいなくてさみしいと思うこともあるけど…」
「でも院長先生もシスターたちもみんな優しいし、仲間もいるし…」
「贅沢は出来ないけど、毎日ご飯が食べれて、着るものもあったかい布団もあって…」
「俺たち恵まれてると思ってるんです」
一生懸命伝えてくれたことはこの子たちの本心だと思う。
ちょっと強がりはあるかもしれないけど、卑屈な感じは一切なかった。
確かによく見ると服につぎはぎはあるけれど、みんな顔色も良く元気いっぱいで。
言葉の端々から何となくこの子たちは孤児というだけで嫌な思いをしたことがあるんだろうなと感じたけど。
それでも変に捻くれることもなく、ほんのわずかな時間接しただけの私でも分かるくらいみんな明るい良い子たちばかりだ。
きっとこの子たちの言う通り院長もシスターたちも本当にいい人たちで、愛情深く子どもたちに接しているんだと思う。
この子たちも院長やシスターたちのことが大好きで。
憐れまれたことでその大切な人たちを否定されたように感じて、だからこの子たちは怒ったんだ…と理解した。