第16章 おとぎのくにの 8
あっという間に子どもたちの持ってきたカゴはどれも野いちごでいっぱいになった。
「たくさん摘めたわね」
「うん!帰ったらシスターとジャムを作るんだ!」
「……シスターと?」
ユーリが嬉しそうに教えてくれたけど、どうして急にシスターが出てきたのか分からなくて。
首を傾げていたらマサキが教えてくれた。
「サトさま、この子たちは孤児院の子たちなんですよ」
「え…」
思ってもみなかったことを聞いて、驚いて咄嗟に何も言えなかった。
子どもたちは全部で十人いないくらい。
一番年長の子でもカズより年下だと思う。
孤児院の子たちということは、この子たちは全員親がいないということだ。
「さとさま?」
黙り込んでしまった私をユーリが心配そうに見ている。
でも、こんな幼いユーリにも親がいないのかと思うと胸が詰まってしまってますます言葉が出てこなかった。
それが顔にも出てしまっていたんだろう。
「そんな顔しないでください」
「俺たちそんな可哀想じゃないですからね」
年長の子たちに少し強い口調で言われてハッとした。
確かに、彼らのことをよく知らないのに勝手に憐れむなんて失礼な話だ。
「そうよね。失礼な態度を取ってしまってごめんなさい」
素直に非を認めて頭を下げると、少し怒ってるようだった子たちは毒気を抜かれたように一瞬ポカンとして。
すぐに慌てだした。
「いやっ、俺たちこそキツい言い方してすみません」
「いいのよ、私が悪かったんだから」
もう一度ごめんなさいと謝ると、子どもたちはへにょっと眉毛を下げた。