第16章 おとぎのくにの 8
子どもたちと一緒にやって来た場所には、辺り一面にたくさんの野いちごがなっていた。
幼い子たちでも普通に歩いて来られるくらいの距離だったけれど、私は初めて訪れる場所だった。
もしかしたらこの子たちがよく来る場所だから、今までマサキが避けてくれていたのかもしれない。
子どもたちは到着するなりパッと散って、慣れた手つきでどんどん野いちごを摘んでいく。
その手際の良さに思わず見惚れていたら、ユーリに繋いだままの手をくいっと引かれた。
「サトさまもつもうよ」
「そうね」
「かずちゃんもー」
「はいはい」
誘われるままに野いちごに手を伸ばしたけど。
「それはまだだよ」
「そうなの?」
まだ数回しか野いちご摘みをしたことのない私たちより幼いユーリの方が詳しくて。
「こっちのがあまいよ」
「まぁ、よく知ってるのね」
「えへへ」
「さとさま、ぼくもおしえてあげる!」
「ぼくも!」
感心していたら他の子たちも我先にと知識を披露しだした。
ふと冷静になるとこんなに小さな子たちに教わっている状況が何だか不思議で、でも全然嫌ではない。
むしろとても楽しくて。
子どもたちに囲まれて和気あいあいとしていたら、こちらの様子をチラチラと伺っていた年長組の子たちが少しだけ警戒を解いてくれた気がした。