第16章 おとぎのくにの 8
「……私たちも一緒に行っていい?」
「えっ!?」
思い切って尋ねてみたら、子どもたちは驚いて目を丸くした。
まさか私がそんなことを言い出すとは思っていなかったのだろう。
「やっぱり迷惑かしら…」
「迷惑だなんて、そんなこと…」
慌てて否定の言葉を口にしてくれたけれど、きっと本音としては断りたいだろうなと思う。
何者かも分からない人間と一緒にいるなんて気を遣うだろうし、緊張もするだろうし。
でも申し訳ないけど、そのことには気づかないフリをさせてもらう。
「サトさま…」
カズとマサキは驚くというより心配そうな顔をしていた。
二人とも私が今まで人と会うことを避けていたのを知っているから。
そもそもはショウたちとのことで人目が煩わしくなって人を避けるようになったけれど。
いつの間にか何も知らない人と接することさえ億劫になってしまっていた。
でも本当は分かってた。
いつまでもこのままでいいわけがないって。
例えば、この先もずっと王都の屋敷でお父さまやお兄さまたちの庇護のもと、今まで通り外に出ることなく隠れて暮らしていくのならそれでもいいのかもしれない。
でも色々と状況が変わった今、そんな生き方をしたいとは思えなかった。
じゃあどうしたいのかという具体的な希望はまだ何もないけれど、そろそろちゃんと考えていきたい。
これはそのための第一歩。
「私も連れて行ってね」
「うん!おねえちゃんといっしょ!わーい!」
小さな小さな手をそっと握ると、喜んだ子どもに思っていたより強い力で手を引かれて。
私は前に向かって大きく足を踏み出した。