第16章 おとぎのくにの 8
マサキの話が終わったら、それで子どもたちとはお別れだと思っていた。
それは向こうもそうだと思う。
もう一度申し訳ありませんでしたと深く頭を下げると、すぐに立ち去ろうとしていたから。
でも突然、一番小さい子が踵を返してとてとてと私たちの元にやってきて。
「あのね、ぼくたちこれからのいちごをつみにいくんだよ」
「……そうなの?」
なんの脈絡もない突然の報告に戸惑いつつも一応返事をすると、その子はすごく嬉しそうに笑った。
「うん!おねえちゃんたちもいっしょにいこ?」
「………え?」
無邪気にきゅっと手を掴まれて。
びっくりして思わず固まってしまった。
別に嫌だったわけではない。
彼らが平民だからといって無礼だとも思わない。
ただ、子どもと接した経験がほとんどないから、どう反応していいのか分からなかった。
「あっ!こらっ!」
私が困っていることに気づいた年上の子たちが真っ青になって飛んでくる。
私の正体は明かしていないけど、マサキが仕えている相手だから、身分が高いことは察しているのだろう。
「離れなさい!」
「やぁーっ!!」
数人がかりで何とかして私から引き離そうとするけれど、完全に逆効果で。
私の腕に両手でしがみついて離れようとしない。
「いっしょいくのー!!」
「すみません!本当にすみません!」
半泣きで駄々をこねる幼子に青ざめて謝り続ける年長の子どもたち。
一体どうしたものかと少し途方に暮れる。
きっと護衛に一声かければ簡単に解決はするだろう。
でも…
私から離れようとしない子どもを見つめる。
こんな小さな子にあまり手荒なことはしたくない。
それに、一体何がどうしてここまで私を気に入ってしまったのかさっぱり分からないけれど。
ここまで純粋に私の存在を望んでもらえるのは少し嬉しい気がした。