第16章 おとぎのくにの 8
マサキが復帰したので、森通いも再開した。
もう現実逃避をするつもりはないけれど、単純に自然の中で過ごす時間が好きだった。
ただこれだけ通っていれば、いくらマサキが人の少ない場所を選んでくれていても誰にも会わないというのは不可能で。
時々誰かとすれ違うことはあった。
でも大抵の人は私の後ろに控えている騎士団の制服を着た護衛たちを見て自然と距離を取ってくれたし、何かあるとしてもせいぜい遠くから会釈をされるくらいだった。
だからあまり気にしていなかったのだけれど。
その距離を簡単に詰めてくる存在が、ある日突然現れた。
それはいつものように花畑へ向かってのんびりと歩いていた時のこと。
「あっ!!」
後方から突然大きな声が聞こえて。
何事かと思って振り返ると、こちらに向かって数人の子どもたちがわーっと駆け寄ってくるのが見えた。
「サトさまっ」
何が何だか分からず動けないでいたら、カズが私を庇うように抱きついてきて。
瞬時に警戒態勢を取った護衛たちが私たちと子どもたちの間に立ちはだかった。
ピリっと空気が張り詰める。
でも子どもたちは警戒する私たちの横をあっさりと素通りしていった。
「……え?」
思わずポカンとしてしまう。
護衛たちも明らかに戸惑っている。
でも子どもたちはそんな私たちにはお構いなしで。
「マサキ!」
私の少し先にいたマサキを嬉しそうに取り囲んだ。