第16章 おとぎのくにの 8
だから純粋にどう変わったように見えるのか気になって。
「どこが?マサキにはどんな風に見えるの?」
「え?!うーん、見えるというか…うまく言えないんですけど、雰囲気?まとう空気?が柔らかくなったような?いや、前がきつかったとかそういう訳じゃないんですけど…」
質問に質問で返されるとおもっていなかったのかマサキは少し驚いた顔をしたけれど、すぐに一生懸命考えながら答えてくれた。
はっきりしないけれど、言いたいことは伝わってくる。
そんな空気感みたいなものを感じ取れるマサキが鋭いのか、私たちが分かりやすいだけなのか分からないけれど、良い方向に変わっているのならいいことなのだと思う。
それにその変わるきっかけをくれたのはマサキだ。
「私たちが変われたのはマサキのおかげよ?」
「え?俺?何かしましたか?」
キョトンとするマサキには全く自覚がないらしい。
私たちにとっては考えをぐるりとひっくり返されたくらい大きな出来事だったけれど、マサキにしたら当たり前のことを口にしただけでそんなすごいことを言ったつもりはないんだろう。
「マサキのおかげで大切なものを素直に大切にしようって思えるようになったから…」
カズがポツリと呟く。
カズの説明は相変わらず言葉足らずだったから、マサキに全てを理解することは出来ないだろう。
それでもマサキは、カズの胸元に飾られたブローチと作り笑いじゃない心からの笑顔を見て、嬉しそうに笑った。