第15章 おとぎのくにの 7
「でもさっきマサキが教えてくれたね。無理に忘れなくていいんだって…ずっと大切にしていいんだって…」
何で大切にしたらダメなのか分からないと首を傾げたマサキ。
とてもシンプルなその言葉に救われた。
どうしたって現実は変わらない。
ショウたちには二度と会えない。
それは分かってる。
でも、初めてできた友だちで。
初めて好きになった人で。
「本当は忘れたくなんてなかった…」
ショウたちと過ごした時間は大切な宝物になって、どんなに消そうとしても消えずに今も私の胸の中でキラキラ輝いている。
「今もまだショウが好きなの…」
口に出したら、ふっと心が軽くなった気がした。
自分の気持ちを無理やり捻じ曲げることは、自分が思っていた以上に負担になっていたらしい。
「自然に想いが消える時まで好きでいたいよ…」
言葉と一緒に涙もこぼれて、そのまま止まらなくなった。
「私も忘れたくないです…ずっと大切にしたいです…」
カズもまた泣き出して。
二人で抱き合ってたくさん泣いた。
いつの間にか他の侍女たちは退室していたようで、部屋にはカズと二人きり。
そのおかげで何も気にせず泣くことができた。
こんなに泣いたのはショウたちと別れた日以来だった。
みんなに心配掛けてしまうからと泣くのをずっと我慢していたけど、本当はずっと泣きたかったんだと気づいた。
泣いて泣いて泣いて。
まだまだ胸は痛むけれど、泣いた分だけ心が軽くなった気がした。