第15章 おとぎのくにの 7
今さらながら、カズともちゃんと向き合っていなかったことに気づく。
誰よりも近く、ずっと一緒にいるから、何も言わなくても分かり合えているような気がして。
カズにも今の自分の思いを、考えを、言葉にして伝えることをしていなかった。
それがカズを追い詰めているなんて気づきもせずに。
「ごめん、カズ」
「サトさま?」
宝物を捨てさせるほど追い詰めてしまって本当にごめんね。
ブローチを握りしめるカズの手の上に、そっと私の手を重ねる。
「マサキが止めてくれて良かった…カズの宝物が失われなくて本当に良かった…」
マサキに心から感謝する。
今ここにブローチがあることが本当に嬉しい。
「サトさま…ありがとうございます…」
じわりとカズの目が潤んだ。
「あのね、カズ」
カズが胸の内を話してくれたのだから、次は私の番だ。
「私だってまだ全然前なんて向けていないの…ただ現実逃避をして、考えたくないことから目を背けていただけ…」
何もかもが新鮮な森に行くことはとても楽しかった。
新しい刺激を受ければ何も考えずに笑顔になれた。
だからカズには私が過去を振り切ったように見えていたんだろう。
「でも忘れられなかった…」
王都の屋敷を離れても、森に通っても。
どんなに現実から目を背けようとしても。
いつだって、何をしていたって気づけばショウのことを考えていた。
二度と戻れない四人で過ごした楽しい時間を思い出しては胸が痛んで。
「ずっと苦しかった…」