第15章 おとぎのくにの 7
「マサキ、今日は素敵な場所に連れて行ってくれてありがとう」
二人のやり取りを見て胸が温かくなったけれど、いつまでもマサキを引き止めてはいられない。
「早く帰って、体を温めてゆっくり休んでね」
「ありがとうございます。お二人もいつもより疲れてるはずなので、ゆっくり休んでくださいね」
最後まで、体調の良くない自分より私たちを気遣うマサキに苦笑してしまう。
「わかったわ、ありがとう」
「では、今日はこれで失礼します………へくしゅっくしゅっ」
クシャミを連発しながら去っていく背中をカズと見送りながら、これ以上マサキの体調が悪くなりませんようにと祈った。
自室に戻りいつものソファに腰掛けると、気が抜けたのか疲れがどっと襲ってきた。
無理をした自覚はあるし仕方ないことなのだけれど、最近はここまで疲れることがなかったから少し驚く。
「すぐにお茶を淹れますね」
くたっとソファに沈みこんだ私を見て、カズは休むことなく動こうとしたけれど。
「いいから、カズも座って」
その手を捕まえてカズを自分の隣に座らせる。
私がここまで疲れを感じているのだから、カズはもっと疲れているはず。
「お茶を…」
「いいから」
カズはしばらくジタバタしていたけど、抱きしめるようにして押さえ込むとすぐにおとなしくなった。
きっと振りほどく元気も残っていないくらい疲れているんだと思う。
お茶は察したほかの侍女がササッと準備してくれた。