第15章 おとぎのくにの 7
マサキが戻ってきてすぐに帰路についた私たち。
マサキ一人なら早く移動できるだろうから先に帰っていいと何度も言ったけれど、マサキはそんな無責任なことは出来ないと譲らなくて。
行き同様私たち最優先で休憩を多く取ろうとするマサキと、少しでも早く帰ってマサキに温まってほしい私たちとのせめぎ合いがありつつ。
無事に日の高いうちに屋敷に戻ってくることが出来た。
マサキの予想より早かったみたいで、私たちなりに頑張った成果はあったようだけど、マサキの顔色はあまり良くない。
帰って来るまでに服はだいぶ乾いていたけれど、やっぱり体が相当冷えてしまったんだと思う。
「私のせいで本当にごめんなさい」
小さく震えているマサキに向かってカズが深々と頭を下げる。
「そんな!気にしないで!」
しゅんとしてしまっているカズに、マサキは明るい笑顔を向ける。
あの顔色では体も辛いんじゃないかと思うのに、そんな様子は一切見せないで。
「…っていうか、うまく着地できなかったカッコ悪い姿なんて早く忘れちゃってよ」
カズがこれ以上罪悪感を感じないように、わざとおどけて見せる。
そんなマサキの優しさをカズは素直に受け取ることにしたらしい。
「ありがとう、マサキ」
顔を上げたカズは、今度は謝罪じゃなくて感謝を口にした。
「マサキのおかげで大切なものをなくさずに済んだの」
ポケットを上からそっと押さえたカズはとても柔らかい穏やかな顔をしていた。
「本当に感謝してる…ありがとう」
「良かった…」
そこに自分が守ったブローチが入っていると気づいたマサキはすごく嬉しそうな顔をして笑った。