第15章 おとぎのくにの 7
「……ごめんっ!俺なにも知らないのに無責任なこと言って…」
泣き出したカズにマサキが焦って顔色を変えた。
何も悪いことなんてしていないのに必死に謝って、本当に優しい人だと思う。
「ちがう…ちがうの…」
オロオロするマサキに、カズは首を横に振るけど涙は止まらない。
でも悲しくて泣いてるわけじゃない。
「ありがとう、マサキ…」
その証拠にカズは泣きながら笑った。
それは久しぶりに見た作り物じゃない笑顔で。
胸がいっぱいになって、私の涙も止まらなくなった。
「私からも、ありがとう…マサキ…」
「ええっ!?」
どうしても私からもお礼を伝えたくて。
声を掛けたら、振り向いたマサキが目をまん丸にして固まってしまった。
まさか私まで泣いているとは思わなかったんだろう。
「何でサトさままで泣いて……え?え?」
マサキは可哀想なくらい狼狽えてしまっていて。
確かにマサキからしたら意味が分からない状況だと思う。
困らせたいわけじゃないのに涙が止まってくれなくて、どうしようと思っていたら。
「あのっ………ふぇっくしっ」
何かを言いかけたマサキが盛大なクシャミをして。
それでハッと我に返った。
当然のことながらマサキはびしょ濡れのままで。
忘れていた訳じゃないけれど、つい意識の隅に追いやってしまっていた。
いくら天気が良いとは言え、そこまで気温が高いわけではない。
濡れたままでいたら風邪をひいてしまう。
「大変!ごめんなさい、マサキ!」
「いや、そんなことより二人の方が…」
マサキは自分のことより私たちの心配をするけれど、気づいたからにはそのままにはしておけない。
自然と涙は止まっていた。