第15章 おとぎのくにの 7
カズは、ワンピースのポケットから何かを取り出すと胸の前で一度ぎゅっと握りしめた。
「カズ…?」
一体何をしているんだろうと思った次の瞬間、カズはその手を振りかぶって握っていた何かを湖に向かって放り投げた。
私は何が起こったのかすぐに理解出来なくて。
「ちょっ…ダメっ…」
焦った声を上げたのはマサキだった。
カズが手を振りかぶるのと同時くらいに走り出していたマサキは、放り投げられた何かに向かって必死に手を伸ばして。
飛びつくようにして何とかキャッチしたものの、そこはすでに湖の上で。
「うわっ…」
派手に水しぶきを上げながら湖に落ちていった。
「マサキっ!?」
思わず悲鳴をあげてしまう。
あまりのことに、カズは声もなく真っ青になって固まっている。
幸いマサキが落ちたのは浅い場所だったみたいで、マサキは尻もちをつく形で岸のすぐそばに座り込んでいた。
「危なかったー!でも我ながらナイスキャッチ!」
マサキはずぶ濡れになりながらも爽やかに笑う。
その右手は高く掲げられていてカズが投げたものが濡れないように守っているみたいだった。
マサキはすぐに立ち上がって岸に上がってきた。
「マサキっ!大丈夫!?ケガは!?」
「全然大丈夫ですよ」
心配で駆け寄った私に、マサキは安心させるようににこっと笑うと、まっすぐに青ざめて震えるカズのところへ行って。
「はい」
その手にたった今投げ捨てようとしたものを返した。
そこでやっと、カズが捨てようとしたものが何だったのか私にも分かった。