第15章 おとぎのくにの 7
「ごちそうさまでした!」
ものの数分で全ての料理を綺麗に食べきったマサキ。
「…お腹は大丈夫?」
「はい!問題ありません!」
今更ながら無理をさせてしまったかもしれないと心配になったけれど、マサキはケロリとしていて。
美味しいものをたくさん食べられて幸せですと満面の笑みを見せてくれて安心した。
「もう少ししたら戻りましょうか。行きに掛かった時間を考えると、早めに動いた方が良さそうなので…」
マサキが少し申し訳なさそうに切り出す。
森は暗くなると危ないらしいので、日があるうちに帰らなければならない。
行きと同じかそれ以上に休憩を取りながら帰ることを考えると、余裕を持って出発した方がいいのは私でも分かる。
もうちょっとゆっくり湖を見ていたい気もするけれど、安全が最優先に決まってる。
ここまで来れると分かったのだから、また来たくなったら来ればいい。
「分かったわ」
マサキの提案に素直に頷くと、それまで私たちの話を黙って聞いていたカズが突然立ち上がった。
「カズ?どうしたの?」
びっくりして声を掛けてみても、カズは振り返りもせず湖に向かって歩いていく。
まるで何も聞こえていないみたい。
「待って!カズ!」
どこか思い詰めたような顔に嫌な感じがして、慌ててマサキとカズの後を追う。
一体何をする気なのかとハラハラしたけれど、カズはさっき水に触れた辺りまで行くと足を止めた。