第2章 おとぎのくにの 2
ージュンsideー
きっといつまで待ってもカズから渡してくれることはないと思ったから、無理やり包みを奪い取った。
カズに何か言われる前にと、すぐ包みを開ける。
出てきたのは俺のイニシャルが刺繍されたハンカチ。
確かに決して上手ではない。
でも細かく丁寧な針目が、俺のためにどれだけ頑張ってくれたのか教えてくれる。
カズの気持ちを伝えてくれる。
胸がいっぱいになった。
「ありがとう、カズ···こんなに嬉しい贈り物初めてだ」
うなだれていたカズが顔を上げる。
その目にはまた涙が溜まってキラキラしていた。
「本当に、本当に嬉しい」
この感動を伝えたいのに、胸が詰まってうまく言葉が出てこない。
もどかしいけど、それくらい嬉しかった。
「大切にする」
カズが瞬きをすると、涙が一粒こぼれ落ちた。
でもカズはもう泣いていなかった。
「ずっと大切にするから」
その雫を優しく拭うと
「ありがとうございます」
恥ずかしそうに、でも嬉しそうにはにかんだ。
俺も嬉しくて、幸せで、少し調子に乗ってみることにした。
「あともう1つ、贈り物くれる?」
「え?」
カズは何を言われたのか分からなかったようで、キョトンとする。
「俺、まだカズから聞いてないんだよな~。一番聞きたい言葉」
そこまで言うと、カズはあっと口を押さえて申し訳なさそうな顔をした。
慌てて姿勢を正すと、改めて俺に向き直って優雅に頭を下げる。
「ジュンさま、お誕生日おめでとうございます。ジュンさまにとって実り多い1年になりますように」
顔を上げると、とても綺麗な笑顔を浮かべてくれた。
目の前には俺が大好きな笑顔。
手の中には大好きな人からの世界に1つだけの贈り物。
これ以上の誕生日なんてないんじゃないかな。
幸せを胸いっぱいに感じながら、カズの笑顔をずっと見つめていた。
end