第2章 おとぎのくにの 2
「カズ、ごめん」
失礼な態度を取る私に何故かジュンさまが頭を下げる。
「ジュンさまっ!!おやめください!!頭を上げてっ···」
王子が侍女に頭を下げるなんて!
あってはならない状態に焦って手を伸ばしたら、逆にその手を掴んで引き寄せられる。
頭がついていかないうちに、気付けばジュンさまに抱き締められていた。
「ジュ···ジュンさま···?」
一体なにがどうなっているのか···
パニック状態に陥った私は、さっきまでとは違う意味で泣きそうだった。
「ごめん、カズ」
ジュンさまとはほとんど身長差がないから、ちょっと動けば触れそうなくらい顔が近い。
耳のすぐ側でジュンさまの声が聞こえて、心臓がドキドキとうるさかった。
「カズのこと軽んじてるから誕生日のこと言わなかったわけじゃないんだ。自分から言うのが恥ずかしかっただけなんだよ」
耳元で聞こえるジュンさまの声は本当に恥ずかしそうで。
「ジュンさま?」
「カズのことがすごく大切なんだ。誕生日も、パーティーなんかどうでもいいから、ただカズに会いたかった」
思わずジュンさまの方に顔を向けたら、至近距離で目が合った。
甘い視線と言葉に顔が熱くなる。
「贈り物なんて何もいらないから、ただ一言カズに“おめでとう”って言ってほしかった。でも···」
ジュンさまは少し体を離すと、私の手元をじっと見つめた。
視線の先にはグシャグシャになった包み。
急いで隠そうとしたけど遅かった。
「それ···俺への贈り物?」
まっすぐな目を見たら嘘はつけなくて。
小さく頷いたら、ジュンさまがすごく嬉しそうな顔をした。
「もらっていい?」
「···ダメです」
こんなもの渡せるわけがない。
そう思ったのに
「やだ!もらう!」
強引にもぎ取られてしまった。