第15章 おとぎのくにの 7
「そろそろ昼食にしませんか」
「はい」
マサキにそう声を掛けられて、カズはサッと立ち上がった。
テキパキと動きながら、マサキや護衛たちに指示を出して湖のほとりに敷物を敷いて。
そこに所狭しと料理が並べられていく。
私も何か手伝いたかったけれど、カズにキッパリ断られてしまった。
仕方なく皆が手際よく動くのを黙って見ていたけど、あっという間に準備は整って。
「サトさまはこちらに」
カズに示されたのは、一番湖がよく見える場所だった。
そこへ素直に腰をおろしたけれど、カズもマサキも護衛たちも誰も座ろうとしない。
きっと身分だとかそんなことを考えているんだろうけど。
皆に見られながら一人で食べるなんて絶対にいや。
「みんなも座って?」
「でも…」
「みんなで食べた方が楽しいし美味しいもの。だから一緒に食べましょう?」
「………はい」
素直にお願いしたら、カズとマサキはすぐに折れて私の両側に座ってくれた。
カズはもちろんのこと、マサキも何度も一緒にお茶をして慣れているから抵抗が少ないんだと思う。
でも護衛たちは頑として頷いてくれなかった。
食事はどうするのか尋ねると、彼ら用のは別にあって交代で食べるから心配はいらないらしい。
相変わらず私たちとは一定の距離を保っている彼らは、もしかしたらお兄さまから何か命じられているのかもしれない。
それなら私は何も言えない。
あんまりワガママを言うと彼らの仕事の邪魔をしてしまうことになるかもしれないから。
カズとマサキが一緒ならそれでいいと気持ちを切り替えて、改めて料理長が張り切って作ってくれたらしい料理に向き合った。