第15章 おとぎのくにの 7
しばらく黙って湖を見ていたけど、だんだんうずうずしてきて。
「水に触ってもいい?」
「いいですよ」
ダメって言われるかもしれないと思って聞いたけど、マサキはすぐに許可してくれた。
「いいの?」
「はい。ただ足を滑らせないように気をつけてくださいね」
湖のどこを見ても水底がはっきり見えているから浅いのかと思ったけど、マサキが言うには浅いのは岸の近くだけで、少し先からは深くなっているらしい。
全然そんな風には見えないから驚いた。
マサキにここなら大丈夫だと案内された水際にしゃがみこんで湖の中にそっと指先を入れてみる。
たくさん歩いて暑くなっていたから、ひんやりと冷たい水が気持ちいい。
両手で水を掬ってみると、そこにあるのは無色透明の普通の水だった。
やっぱり青く見えるだけで、水自体は私の知っている普通の水と変わらないらしい。
私の隣にしゃがみ込んだカズも湖と私の手のひらの中の水を見比べて首を傾げている。
「不思議ですね」
「本当にね」
そのまましばらく水に触れて遊んでいたら、時々水面がキラキラ不規則に光っていることに気がついて。
「何か光ってる?」
何かと思ってよく見たら泳いでる魚の鱗にお日さまの光が反射しているみたいだった。
「魚?」
「はい。たくさんいるからここで釣りをする人もいるんですよ」
私たちのすぐ後ろにいたマサキが教えてくれる。
釣り…知識としては知っているけれど、もちろんやったことはない。
「それって私にも出来る?」
「出来ますよ!まぁ、釣れるかは運次第ですけど…次は魚釣りに行きますか?」
「うん!」
にこにこ提案してくれるマサキに笑顔を返す。
そんな私をカズがじっと見ていた。