第15章 おとぎのくにの 7
実際に行ってみたらもっと色々見てみたくなって、それから天気さえ良ければ毎日のように森へ通うようになった。
屋敷の庭とは違う、本物の自然の中にいると何だかすごく落ち着いた。
毎回必ずついてくるカズもさすがに慣れたみたいで、最初の頃ほど森を怖がらなくなった。
虫が苦手みたいで、それだけは慣れることなくいつも怯えているけど。
マサキは私の部屋でじっとしているより外に出た方がずっとイキイキとしていて。
自分のお気に入りの場所に次々と案内してくれた。
うさぎやリスに会えるまで何日も探してみたり、花畑で花を摘んで花冠を作ってみたり。
マサキお気に入りの登りやすい木を教えてもらった時は、木登りに挑戦してみたりもした。
意外と才能があったみたいでマサキの真似をしてみたらスルスルと登ることが出来た。
カズは真っ青になって止めたし、マサキと護衛たちが相当オロオロしていたから、あまり高いところまで登れなかったけど。
いつかまた機会を作って、もっと高いところまで登ってみたいなと思ってる。
森へ通う日々はとても新鮮で。
初めて見るもの、経験することに毎日ドキドキワクワクして。
体を動かして疲れるからか夜はベッドに横になるとすぐに寝てしまうし、夢も見ない。
自然と考えたくないことを考えずに済むようになってホッとしていた。
たぶん、ただの現実逃避なんだと思う。
考えなきゃいけないことがあるのも分かってる。
でも今は、もう少しだけ現実から目を背けていたかった。