第15章 おとぎのくにの 7
「わぁ!野いちご?」
「そうです」
見える場所だけでも数え切れないくらいたくさんの野いちごがなっている。
緑の葉に赤い実が映えて可愛らしい。
「こうやってなってるのね」
初めて見る光景に感動した私は何も考えずにふらふらと近づいてしまって。
「あっ、触っちゃダメです!茎に棘があったりするので!」
マサキに大きな声で止められて、無意識に伸ばしかけていた手を慌てて引っ込めた。
そういえばお兄さまにも言われていたと思い出して反省する。
「ごめんなさい」
「俺の方こそ大きな声を出してすみません。俺が採りますね」
マサキはひょいひょいと手馴れた様子で野いちごを摘んでいく。
どうぞと手のひらに乗せられた野いちごは、真っ赤でキラキラしていてまるで宝石みたいで、しばらく見惚れた。
その間にマサキは一つ自分の口に放り込んでいて。
「うん!甘い!」
あまりにも美味しそうな顔をするから、私もパクリと口にした。
ちょっぴり酸っぱいけど、マサキの言う通り甘くておいしい。
ジャムとは全然ちがう。
「サトさまっ…」
カズが何か言いかけたけど、何となくお小言なような気がしたから、急いでカズの口にも野いちごを押し込んで。
「おいしいね」
「おいしいですけど…」
にっこり笑いかけたら、カズは諦めたようにもぐもぐと口を動かした。
摘みたての野いちごを食べて、大きな木の根に座って休憩して、その後すぐにお屋敷に戻った。
きっとマサキにしたら何でもないこと。
でも私にとっては大冒険だった。
何もかもが初めての体験ですごくドキドキした。