第15章 おとぎのくにの 7
「すみません、ここからちょっと歩きにくくなります」
森の中をしばらく進んだところで、マサキが急に道から外れて木々が生い茂る方へ足を向けた。
「え?」
よく見れば細いけもの道みたいなものがあるけど、今まで歩いてきた道とは全然違う。
「こっちに穴場があるんですよ」
戸惑う私たちにマサキがちょっと申し訳なさそうに説明してくれる。
なるほど。
今まで歩いてきた道が歩きやすいのは、たぶんそれだけ人がよく通るからなんだろう。
人に会いたくないと言ったのは私で、マサキはそれを叶えようとしてくれてる。
それならば私は従うだけ。
「わかったわ、連れて行って」
「はい!」
マサキはどんどん細くなる道とは言えないような道を進んでいく。
護衛たちが何も言わないから危険ではないのだろう。
邪魔な小枝や丈の長い草を薙ぎ払いながら進んでいくマサキの後ろを、カズの手を引きながらついていく。
今日は動きやすさ重視で飾りのないシンプルなワンピースに歩きやすい革靴で来たけど、大正解だった。
ちなみにカズも今日は侍女のお仕着せじゃなくて、私と同じような格好をしている。
慣れない私たちに合わせてゆっくり進んでくれているのは分かるけど、それでも歩きにくくて息が上がる。
でも全然いやじゃない。
何だかすごい冒険をしているような気がして胸がドキドキした。
どれくらい歩いたのか…きっと大した距離ではなかったんだと思うけど、木々の間を抜けた先に少しだけ開いた空間があった。
「ここです!」
マサキが足を止めて指をさす方を見ると、赤い実がたくさん見えた。