第2章 おとぎのくにの 2
ーカズsideー
何だか色々いたたまれない気持ちになって、思わず逃げるようにサロンを飛び出してきてしまった。
やみくもに走って、たどり着いたのは中庭にあるサトさまの秘密の場所。
私たち4人しか知らない場所。
急にへなへなと足の力が抜けてしまって、その場に座り込んだ。
私は一体何をしているんだろう。
突然泣いて、走り去って。
洗うと口実に使ったハンカチも忘れてきてしまったし。
訳がわからなくて、きっとみんな困ってる。
サトさまは心配しているかもしれない。
すぐに戻って謝らなければと思うのに、立ち上がる力がなかった。
隠し持っていた包みをそっと取り出す。
ジュンさまのハンカチに施された刺繍は本当に綺麗だった。
私のものとは雲泥の差だ。
比べることすらおこがましい。
あんな素晴らしいものを見てしまったら、もう私の作ったものなどお渡しすることなんて出来ない。
再びこみ上げてきた涙を唇を噛んで我慢する。
やっぱり私なんかが、ジュンさまに贈り物をしたいなんて思うことが間違いだったんだ。
いくら今だけの夢だとしても、あんな高貴な方に想いを寄せること自体間違ってたのかもしれない。
これはもう捨ててしまおう。
握り締めた包みをくしゃりと潰す。
一緒に私の想いも捨ててしまえればいいのに。
我慢していた涙がまた頬を流れていった。
「カズっ!」
急にジュンさまの声がしたと思ったら、茂みをかき分けて息を切らしたジュンさまが現れた。
「え···ジュン···さま?」
驚いてしまって呆然とジュンさまを見上げていたら、ジュンさまは苦しそうな顔をして近付いてきた。
そっと手を伸ばすと、私の頬を拭ってくれる。
その仕草で自分が泣いていたことを思い出して、慌てて顔を背ける。
こんなみっともない顔を見られたくなかった。