第15章 おとぎのくにの 7
またある日のお土産は、森でマサキが採ってきた野いちごで作ったというジャムだった。
めちゃくちゃ酸っぱい野いちごの話を思い出してちょっと不安になったけど、ドキドキしながら食べてみたら甘酸っぱくてとても美味しかった。
ジャムを食べながら、野いちごってどこにどんな風になっているんだろうと想像してみる。
マサキの話を聞く度、お土産を目にする度に、好奇心が膨らんでいって。
「私も森に行ってみたい…」
ある日ぽろりと願望が口からこぼれた。
小さな呟きだったのに、マサキにはしっかり聞こえたみたいで。
「行きますか?いつでも案内しますよ!」
満面の笑みで受け入れられて。
「……でも人に会いたくないの」
「俺あまり人が来ない穴場を知ってますよ」
不安なことにもあっさり解決策を示されて。
気持ちが前向きになった。
何かに興味を持ってワクワクするのも、外に出たいと思うのも、すごく久しぶりな気がした。
「……お兄さまに行ってもいいか聞いてみる」
ちょっと前ならば絶対叶わなかったと思う。
でも今ならたぶんダメとは言われないと思ったし、実際にお兄さまは許可してくれた。
ただし注意事項はとても多かった。
マサキから離れないこと、1人にならないこと。
野生の動物に触らないこと、見知らぬ植物にも触らないこと。
森の奥には危険な獣もいるから、絶対に勝手に動かないこと。
そしてマサキ以外にも護衛をつけること。
お兄さまに言われたことを絶対に守ると約束してやっともらえた許可だった。