第15章 おとぎのくにの 7
あまりにも気持ちの良いマサキの食べっぷりに、最初はただ圧倒されるだけだったけど。
そのうち何だかすごく美味しそうに見えてきて。
食欲なんてなかったのに、気づけばマサキにつられるように私もそれなりの量を食べていた。
それを見た侍女たちがすごく喜んで、それからマサキとお茶をすることが日課になり。
最初あんなに反対していたカズも、毎日何も言わずにお茶の準備をしてくれるようになった。
マサキは明るくて元気で礼儀正しくて、裏表のないまっすぐな性格で。
私の侍女たちにもあっという間に受け入れられて可愛がられるようになった。
お茶の時に、明らかにマサキのためのサンドウィッチやパイみたいな軽食が用意されるようになったりとかね。
最初は緊張していたマサキも少しずつ慣れてくると、お茶をしながら色んな話をしてくれるようになった。
一番多いのは騎士団の訓練のこと。
その日どんなことをしたのか、褒められて嬉しかったこと、出来なくて悔しかったこと。
よく分からなくて想像も出来ない話もあったけど、私の全く知らない世界のことで興味深かった。
あと聞いていて面白かったのが、森の話。
訓練の一環で入ることもあるし、この辺の子どもたちの遊び場でもあるらしくてマサキには馴染み深い場所らしい。
木登りしやすいお気に入りの木があるとか、綺麗な花を見つけたとか、ウサギやリスに会ったとか、見つけた野いちごがめちゃくちゃ酸っぱかったとか。
マサキからしたらささやかなことばかりなのだろうけど、聞いていてとても楽しかった。
そして私が興味を示したからか、マサキは時々お土産を持ってきてくれるようになった。
ある日は、マサキが摘んできたという小さな花束。
私の部屋には庭師が育ててくれた花が毎日届けられて綺麗に活けて飾られている。
マサキが持ってきてくれたのは、それとは全然違う野生の花。
比べてしまえば素朴だけれど、とても可愛かった。