第15章 おとぎのくにの 7
翌日からマサキは毎日やって来た。
ただ心配していたほど接する時間は長くなかった。
午前中は騎士団の訓練があるらしく、私たちのところへ来るのは午後だけ。
そして日が暮れる前に帰っていく。
最初、マサキは護衛だからと扉の脇にじっと立っていた。
何も話さないし全く動かない。
でも今まで私の部屋の中に護衛なんていなかったから、違和感がすごい。
侍女たちは生まれた時からずっとそばにいるのが当たり前だったから何とも思わないのに。
マサキに常に見張られているような気がしてしまって、ぼんやりしたいのに出来ないくらい落ち着かない。
しばらくは意識しないように頑張ってみたけど、結局耐えきれなくなって。
マサキも誘ってカズと3人でお茶をすることにした。
マサキは固辞したし、カズもそれぞれの立場がとか仕事がとかごちゃごちゃ言って反対してたけど、最終的には命令に近い形で押し切った。
だってこの状況に耐えられないんだもん。
それなら直接向き合って話をした方が全然いい。
たぶんお兄さまはこうなることを狙ってただろうしね。
「どうぞ召し上がれ」
侍女たちにお茶の準備をしてもらって、マサキに勧める。
でもマサキは途方に暮れたような顔をしていて。
マナーが分からないからと遠慮してお茶にもお菓子にもなかなか手をつけなかったけど、そんなの気にしないでいいと強引に勧めたら、恐る恐る口をつけた。
「……おいしいです!」
「よかった、遠慮しないでたくさん食べてね」
一度食べ始めたら、マサキはびっくりするくらいよく食べた。
体を動かしてるから食べても食べてもお腹が空くんだって。
マサキはマナーのことを気にしていたけど、確かに上品な食べ方とは言い難いけど見苦しさなんかは全然なかった。