第15章 おとぎのくにの 7
「あのね、カズは私の乳母の娘で小さい時からずっと一緒なの」
困り顔のマサキが可哀想で、ちゃんと説明する。
それに、これからしばらく顔を合わせることになるのなら知っておいてほしかった。
カズは私にとってすごく大切な存在なんだって。
「だから侍女だけど、私は本当の妹のように思っているの。私だけじゃなくてお兄さまもね」
まぁ、お兄さまは元からカズのことを可愛がっていたとはいえ、ここまで完全に妹扱いするようになったのは今回の件で巻き込まれたカズへの罪滅ぼしみたいな気持ちもあるんだと思う。
でもマサキにそんなことまでは言えない。
お父さまに口止めされていることだから誰にも言えないし、言いたいとも思わない。
だから話せることは限られるけど、マサキはうんうんと頷きながら聞いている。
素直に納得してくれているようでホッとする。
「きっとお兄さまが紛らわしい言い方をしたんだと思うの。それでマサキを混乱させちゃったみたいで…ごめんなさい」
「そんなっ、謝らないでください!サトさまが謝られるようなことは何もないです!」
お兄さまの伝え方が悪かったことを謝ると、それまで黙って話を聞いていたマサキは焦り出した。
「ちゃんと確認しなかった俺が悪いんです。そのせいで混乱しちゃって、みっともないところをお見せしてすみませんでした」
マサキの立場ならお兄さまに言われたことをそのまま信じるしかないと思う。
だからマサキは悪くないのに、自分に非があると頭を下げて。
「俺の任務はお二人を守ることです。カズがお嬢さまでも侍女でも関係ありません。これからどうぞよろしくお願いします」
カズが侍女だからって何も変わらないと、二人とも守ると言い切る姿を見て、お兄さまがマサキを選んだ理由が分かった気がした。
まだ知り合ったばかりだけど、この人は信用していいんじゃないかなと思った。