第15章 おとぎのくにの 7
きっとお兄さまが、妹たちを護衛するようにってマサキに言ったんだと思う。
たぶんお父さまと同じで、お兄さまの中でももうカズは完全に妹扱いになっているんだろうな。
ただカズはそう思っていないわけで。
「違います」
マサキに向かってキッパリと否定した。
「私はサトさまの侍女です」
はっきり言い切るカズにマサキが首を傾げる。
「こんなにきれいなのに?本当にお嬢さまじゃないんですか?」
どこか既視感のあるやり取り。
ちょっと考えて、初めて会った時にジュンが似たようなことを言っていたんだと思い出す。
そのまま、初めてショウとジュンと会った時のことをまざまざと思い出してしまって胸がズキリと痛んだ。
カズも同じことを思い出したんだろうか。
ほんの一瞬だけど、痛みを堪えるように眉を顰めて唇をぎゅっと噛みしめていた。
でもカズはすぐに表情を戻して。
「違います!私は侍女なので敬語も不要です!」
何かを断ち切るかのように、力強く言い切った。
笑顔だけど何か妙な迫力がある。
「本当にいいんで…いいの?」
咄嗟に敬語で返しかけたマサキは、カズに睨まれて慌てて言い直してた。
「構いません。敬語を使われる方が困ります」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
マサキはカズの迫力に負けて敬語を使わないことを承諾してたけど。
でも絶対何が何だかわかってないよね…