第15章 おとぎのくにの 7
正直なことを言ってもいいなら、護衛なんていらない。
私もカズも今まで家族と使用人たち以外とほとんど接したことがない。
……ショウとジュンの顔が一瞬頭を過ぎったけど、それは気づかなかったことにする。
知らない人間と接することに慣れていないのに、護衛ということはそばに居る時間も長くなるだろう。
もしかしたら友だちになれるのかもしれないけど、今は友だちがほしいという気持ちはない。
前はあんなに憧れていたのにね。
カズとほかの侍女たちとお兄さま。
気心の知れたみんなが居てくれれば十分だと今は思ってる。
でもご自分で仰っていた通り毎日とても忙しそうなお兄さまが、私たちのためにわざわざ動いてくれたのだと思うと断りにくい。
それに不要だと言われたらマサキはどう思うだろうか。
やっぱり傷つく…よね…?
緊張しつつも黒目がちな瞳にやる気を漲らせて真っすぐにこちらを見ているマサキを見たら、必要ないなんてとても言えなくて。
結局そのまま受け入れるしかなかった。
その後すぐお兄さまは仕事に戻られて。
その場に残されたマサキは所在なさげに佇んでいる。
受け入れてしまったんだから、放置する訳にもいかない。
「これからよろしくね、マサキ」
「は、はいっ!よろしくお願いします!」
少し緊張しながら声を掛けたら、分かりやすくマサキの顔がぱぁっと輝いた。