第15章 おとぎのくにの 7
私のために用意された部屋は、王都の屋敷の私の部屋と同じくらい居心地のよい空間だった。
白と青でまとめられたシンプルだけど可愛らしい内装。
大きな窓は庭に面していて眺めが良い。
王都では庭の向こうに王城やよその屋敷の屋根なんかが見えていたけど、ここは庭の先にも自然が広がっていて見える範囲にほかの建物はない。
この窓からの景色は私のお気に入りになった。
でも外に出たいとは思えなかった。
お兄さまには、屋敷の中は好きに移動して自由に過ごして構わないと言われたけれど、私はほとんどの時間を与えられた部屋に引きこもって過ごしていた。
私の部屋にはこちらの侍女は全く近付かない。
でも屋敷の中を歩けばどうしても誰かしらに会ってしまう。
何を言われたわけでも、されたわけでもない。
王都と同様の教育が行き届いた使用人たちは、みんな優しくてとても感じの良い人ばかりだ。
だから会っても何も困らない。
大体こちらの屋敷にはお兄さま以外私たちの真実を知る者はいないし、私とショウが婚約していたことすら知られていないかもしれない。
そう頭では分かっている。
それなのに、どうしても人の視線が気になってしまって。
結局ここでも自然と部屋にこもるようになってしまったのだ。
私が変わらないから、カズも変わらない。
作り笑顔を貼り付けてせっせと私のために働いている。
何かを変えるためにここまで来たのに。
このままじゃよくないと思っているのに。
何をどうしたらいいか分からない。
そんなもどかしい思いを抱えたまま、毎日を無為に過ごしていた。