第15章 おとぎのくにの 7
領地までは普通なら馬車で2~3日くらいの距離らしい。
でも今回は旅慣れていない私たちのために、かなりゆったりとした日程が組まれていたようで、結局到着まで1週間ほど掛かった。
「サト、カズ、お疲れさま。よく来たね」
出迎えてくれたのは一番上のお兄さまと使用人たち。
「お兄さま、しばらくお世話になります」
「しばらくだなんて…いつまででも居てくれていいんだよ。可愛い妹たちを独り占めできて私は嬉しいんだから」
にこにこしているお兄さまは本当に私たちを歓迎してくれているようで安心するけど。
お義姉さまの姿が見えないことを不思議に思って尋ねると、なんと新しい命を授かって今はご実家に戻られているらしい。
それを聞いてひゅっと息を飲んだ。
とてもおめでたいことなのに、お祝いの言葉を口にする余裕もない。
「もしかして私たちのせいで…?」
「ちがうよ!」
お兄さまはすぐに否定してくれたけど、たぶんそうだ。
お義姉さまは私たちと顔を合わせないようご実家に戻られたんだと思う。
それは単純に私たちが気を遣わず過ごせるようにというだけのことかもしれないし、もしかしたら絶対に子どもを生むことが出来ないとわかったばかりの私たちへのお兄さまの配慮なのかもしれない。
「申し訳ありません…」
「本当にちがうよ。私は忙しくて家に居ないことも多いから、実家の方が安心なんだよ」
うなだれる私にお兄さまは優しく説明してくれる。
それも嘘ではないのかもしれないけど、それだけじゃないだろう。
でも申し訳ないと思いつつも、心のどこかでホッとしてしまってもいた。
真実を知らないお義姉さまに会うのが本当は少し不安だったから。