第15章 おとぎのくにの 7
私とカズ、専属侍女全員の他に、心配したお父さまがびっくりするくらいの人数の護衛をつけたので、かなりの大所帯での移動になった。
荷物もかなりの量なので、馬車が何台も連なっている。
気を使ってくれたのか、私たちの馬車は私とカズの2人きり。
前後左右を馬に乗った護衛に囲まれて、ゆっくり進んで行く。
窓の外には初めて見る外の世界。
どこを見ても塀なんてなくて、道はまっすぐどこまでも続いてる。
見るもの全てが初めてのものだらけで新鮮だけれど、心は全然浮き立たなかった。
ずっといつか外に出られる日を楽しみにしていたけど、まさかこんな状況になってその日を迎えることになるなんて想像もしてなかった。
本当は、ショウと一緒に舞踏会に出るのが初めての外出になるはずだったのにな…
“いつか俺がサトを外の世界へ連れて行くから”
もう絶対叶えられることのないショウの言葉を思い出して。
胸が痛くて滲んだ涙を、まばたきをして誤魔化す。
いつもなら私の様子にすぐに気づくはずのカズは、ぼんやりと反対側の窓の外を見ていて私のことを見ていなかった。
すごく切ない目をしていて、ジュンのことを思い出してるのが分かる。
カズは一度だけジュンと街に行ったことがあるもんね。
最初からその楽しさを知らない私と、知ってしまった幸せを二度と手に出来ないカズ。
どっちが辛いんだろう…なんて考えかけて、すぐに馬鹿らしいと考えるのをやめた。
そんなの比べることじゃない。
どっちも辛いに決まってる。